2016年8月28日日曜日

DEEP PURPLE  「Stormbringer」



ディープ・パープルの第三期の最後のアルバム「嵐の使者です。1974年の作品。本作品はリッチーの心ここに在らず的な感覚で、失敗作として語られることの多い不幸な作品ですが、聞けば判るとおり、良質な作品となっております。ファンキーなグレン・ヒューズとブルージーなデヴィッド・カバーディルの良いところが出ており、個人的にはロックの名盤の1枚であります。良い作品です。本作品後、リッチーはレインボウを結成し新たな地平線を切り開くのでした。


若い頃は第三期パープルといえば「BURN」のような熱い血潮が溢れる曲が好きでしたが、本作品のような様々な音楽フィールドが合体した作品世界に目が行くようになりました。良い作品ですので、聴かず嫌いは勿体無いですよ。

藤原正彦 「遥かなるケンブリッジ」



藤原正彦「遥かなるケンブリッジ」を読了。数学者である作者のケンブリッジ留学記。留学といっても先生として1年間の研究滞在。妻と3人の子供も同行。本書ではその留学記というよりは、イギリス人のものの考え方。アメリカ人や日本人とのものの考え方の違いを作者の実体験から考察している。イギリス人のものの考え方を知るには最良の書でしょう。本書を読んで考えさせられることしきりです。若い人ほど本書から受ける感動は沢山あるでしょう。グローバルな時代に本書が啓示してくれる様々なことは、これから持つ意味が大きくなります。
良い本と巡りあいました。阿川弘之の著作の紹介からの出会いでした。

2016年8月26日金曜日

庄野潤三 「愛撫 静物」



庄野潤三「愛撫 静物」です。作者の初期短編集です。作者晩年の家族小説に心を打たれたので、遡って読み返しています。初期短編は所謂私小説ではなく、物語を創造している、少なくとも実際にあった事柄を参考にするくらいで、想像力と創作力が見て取れます。しかし、本作品集の中で中心となる、中篇「静物」は私小説の緊張感が漲っています。様々な場面が挿入されており、晩年の作風を感じることが出来ますが、密かに組み込まれている緊張感を表す場面では非常に心に寒気をもたらすように作られています。一見幸せに見える家族の仲の緊張感が怖いです。そこを表面をこするだけで表しています。だから余計に寒気が増します。


なかなか面白い作者ではあります。作風の変化を楽しみながら、彼の作品を読み進めていくことが出来ることでしょう。


谷崎潤一郎 「卍」


谷崎潤一郎「卍」を読了。谷崎の性癖全開の物語。本作品は主人公の独白形式となっている。話を聴いている「先生」が谷崎自身なのであろう。

本作品には谷崎の美意識、谷崎の人間観が存分に散りばめられている。関西の上流階級の人々が話す関西弁と同じ人物がその優雅な関西弁を使って行っていることの異常性。その二つがくっきりと対比させられることにより物語の輪郭がくっきりする。

まさに猪木の卍固めのようにこんがらがった人間関係。ラストについてもただの物語に終わらせない、谷崎の想像力に満ち溢れている。性によって人間は破滅する。そのことを根源的に理解している谷崎だからこその物語である。

2016年8月24日水曜日

MISFITS 「Die Die My Darling」



ミスフィッツの1984年の12インチ「Die Die My Darling」です。ジャケットはパスヘッド。メタルファンにはメタリカがカバーしたことで有名な曲です。原曲も疾走感溢れる、パンクスピリッツ十分な曲です。
A面「Die Die My Darling」、B面「We Bite」「Mommy Can I Go Out and Kill Tonight?」の3曲を収録。勢いであっという間のミスフィッツの世界。ホラーパンクです。


ユニクロで彼らのTシャツが500円だったので、思わず購入してしまいました。ロックっぽくないですね。ごめんなさい。

秋田県立美術館 「異界をひらく」展



秋田県立美術館で「異界をひらく」展を観る。上記のポスター左に石田徹也作品が見えたので、これは見に行かなくてはと思い立ち、遅い夏休みを利用して鑑賞。

石田徹也は現在のファンのほとんどと同じ出会いであったと思う。数年前のNHK教育テレビ(Eテレ)にて観た特集で一発でノックアウトされたのである。その作品の独創性、そして作品のすべてから立ち昇る筆舌に尽くしがたい悲しさ、こころの奥底に訴えかけるそのメッセージはその番組を観た人間達に「石田徹也」という人物を知らしめるのには十分であった。

個人的にも画集及び全仕事といった作品を買い求めたし、石田徹也の作品はなるべく観るように心ががけてきた。そして現在の住まいの秋田でも見ることができ、しあわせである。

今回も石田の作品にやられてしまった。見ている自分が絵画の中の人間、その悲しみを湛えた目で見透かされているような感覚。その異次元の絵画世界が異次元ではなく、現実社会でも通じるような感覚。残暑が厳しい中でも、身体がしゅっと冷えたのは、何も館内の冷房だけではないはずである。

秋田県立美術館の目玉、藤田嗣治の「秋田の行事」もいつもどおり心を和ませる。

良い美術館です。

2016年8月23日火曜日

阿川弘之 「大人の見識」



阿川弘之「大人の見識」を読了。本書を読むきっかけは、第1章に武田信玄の遺訓として
 一つ、分別あるものを悪人とみること
 二つ、遠慮あるものを臆病とみること
 三つ、軽躁なるものを勇豪とみること
と紹介していることでした。信玄はこの3つを「主将の陥りやすき三大失陥」としています。まさにこの3点はそのとおり。さすが風林火山の信玄です。こんな直球で攻められたら、読むしかありません。


本書は阿川弘之の戦争感やイギリス人の生き方を中心に人生の「叡智」を大人の見識として紹介しています。特にイギリス人の生き方考えかたには考えさせられる事柄がおおく、本書に紹介されている書についてもあたろうと考えています。
この年になって、なかなか考えさせられる本との出合いも少なくなった私には久しぶりに知的好奇心を掻き立ててくれる書でした。


2016年8月21日日曜日

Pink Floyd 「Division Bell 」


ピンク・フロイドの1994年の作品「対(TSUI)」です。自分の中でフロイドの最高傑作であるとともに、個人的な癒しの音楽。本作品には何回心の底から癒されたことか。

新幹線で移動する際の心の静寂。眠れない夜のお伴とこれだけでなく、本当に様々な面で本作品を聴く機会が多い。今回も自宅で暑い夏の昼間に本作品が流れるだけで、まるで風鈴のような作用を及ぼす。


長尺な作品ですが、まったく飽きることがありません。ギルモアの単音ギターの音色が最高に美しい。精神の根っこに響いてきます。良い作品です。

曲単体ではなく、アルバム全体で一つの作品、1曲との理解。


これからも永遠に聴き続ける個人的マスターピース。

2016年8月20日土曜日

Van Halen 「5150」


ヴァン・ヘイレンの1986年のアルバム「5150」です。個人的にはアメリカン・ハードロックの最高峰。アルバム全体で捨て曲なしの名盤中の名盤です。

しかしながら、ボーカリストが前作「1984」までのデイブ・リー・ロスからサミー・ヘイガーへ本作品から変わっており、その点が不服のファンも多いことでしょう。

しかしながら本作品の音にはサミー・ヘイガーのボーカルが合うのです。キーボード多様などといった批判もあるこの時期のヴァン・ヘイレンですが、これだけ高品質のアメリカン。ハードロックを創り上げたその創作力に脱帽です。

メロディがいい、スピード感もいい。アメリカン・ハードロックに私が望むもの全て詰め込まれています。今聞いても30年前の古さは全く感じさせない完成度です。最高の作品。

因みに私がメタル好きになった原因の一つの作品です。大学の先輩、ホリオさんが私の誕生日に本作品をカセット・テープに録って来てくれたのです。もう一枚はメタリカでした。


2016年8月17日水曜日

谷崎潤一郎「蓼喰う虫」

商品の詳細

谷崎潤一郎「蓼喰う虫」を読了。大谷崎の本領発揮といった作品です。全編に漂う妖気のようなエロティシズムは凄いの一言。人形浄瑠璃の世界観を加えることで妖気をさらに増した。


人形のような妻の父親の妾と人形浄瑠璃はラストで交わる。その先のことは読者の想像に任されている。本書のタイトルに従えば、あんなこと、こんなこと考えてしまうのは人情でしょう。作者の実生活(佐藤春夫との細君譲渡事件)を考え合わせれば、なんか凄いこと想像してしまいます。


本作品はそれだけでなく、谷崎の美意識である「陰翳礼賛」からの記述もあり、楽しくさせてくれる。

とりもなおさず、本作品は主要な登場人物である夫婦にしても、奇妙な二人であるし、現代ならまだしも、その時代にそんな登場人物を描いてしまう谷崎の先見性というか、日本を見つめるまなざしに参ってしまう。もしかすると谷崎は人間の本性を知り抜いていたからこそ、これだけの先見性を見せたのかもしれない。どうせ百年たっても人間なんて変わらないんだから、と。

遠藤周作「沈黙」



遠藤周作「沈黙」を読了。考えさせられる物語。現在の企業の不正行為、オリンピックやツール・ド・フランスでのドーピング問題にも通ずる人間の根源的な問題を扱っている。「転んだ」宣教師を誰が責めることができるであろうか。信仰を守り続けるのは単純で、言葉は悪いかもしれないが、簡単なのかもしれない。信仰を捨て、人の命を救うといった大義名分の元で「転ぶ」ほうが大変なのかも知れない。その後の人生もしかり。生き続けるからこその辛さも理解できる。


読書の醍醐味は自分が体験できないことを、物語の流れに自分を置くことで体験できることであると思う。読書しながら、身悶えしながら、本書を読みました。すばらしい読書体験でした。