谷崎潤一郎「蓼喰う虫」を読了。大谷崎の本領発揮といった作品です。全編に漂う妖気のようなエロティシズムは凄いの一言。人形浄瑠璃の世界観を加えることで妖気をさらに増した。
人形のような妻の父親の妾と人形浄瑠璃はラストで交わる。その先のことは読者の想像に任されている。本書のタイトルに従えば、あんなこと、こんなこと考えてしまうのは人情でしょう。作者の実生活(佐藤春夫との細君譲渡事件)を考え合わせれば、なんか凄いこと想像してしまいます。
本作品はそれだけでなく、谷崎の美意識である「陰翳礼賛」からの記述もあり、楽しくさせてくれる。
とりもなおさず、本作品は主要な登場人物である夫婦にしても、奇妙な二人であるし、現代ならまだしも、その時代にそんな登場人物を描いてしまう谷崎の先見性というか、日本を見つめるまなざしに参ってしまう。もしかすると谷崎は人間の本性を知り抜いていたからこそ、これだけの先見性を見せたのかもしれない。どうせ百年たっても人間なんて変わらないんだから、と。
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