庄野潤三「愛撫 静物」です。作者の初期短編集です。作者晩年の家族小説に心を打たれたので、遡って読み返しています。初期短編は所謂私小説ではなく、物語を創造している、少なくとも実際にあった事柄を参考にするくらいで、想像力と創作力が見て取れます。しかし、本作品集の中で中心となる、中篇「静物」は私小説の緊張感が漲っています。様々な場面が挿入されており、晩年の作風を感じることが出来ますが、密かに組み込まれている緊張感を表す場面では非常に心に寒気をもたらすように作られています。一見幸せに見える家族の仲の緊張感が怖いです。そこを表面をこするだけで表しています。だから余計に寒気が増します。
なかなか面白い作者ではあります。作風の変化を楽しみながら、彼の作品を読み進めていくことが出来ることでしょう。
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